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2017年4月

2017年4月14日 (金)

『コルシア書店の仲間たち』須賀敦子著 日本文学全集25 河出書房新社

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須賀敦子さんの軌跡を追って、ミラノの街を旅した大ファンの方、
読書会は全く初めての方も ご参加いただきました。

・皆さん、文章の持つ魅力、巧さと温かさなどは同意見でした。
・須賀さんの作品の中で一番印象深い、映像が浮かんでくるみたい。
・日本ではほとんど感じられない上流階級の人々の描写が興味深かった。
・魂と分かち合うほ相手と巡り会えた幸せと、早すぎる死別ゆえ、
 作家への道を歩み出し、心を動かされる物語を紡ぎ残されたが、反面切ない。
・戦後の日本で、女性の生きる選択肢が結婚しかない時代、周囲の圧力をはねのけ、
 イタリア  で生きることを決意した生き方に強く共感。
・どこかしらイメージがぼんやりしているとの読後感があった。

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今回は、コルシア書店の主なメンバーたちの写真や映像を見ていただき ました。
それにより、登場人物に輪郭に肉付けできました、
すっきりと腑に落ち ましたとの感想をいただきました。

実をいえば、わたしの一番好きな作家は須賀敦子さんです。
ミラ ノを旅した大ファンの方には及びませんが、ミラノのコルシア書 店あと、
現在は『サン・カルロ書店』となっています場所を訪れる機会がありました。

ミラノに旅する前に『コルシア書店の仲間たち』を再読すべきだったと、
後悔したのです。
『街』という章で、スパダーリ通りが登場します。
ミラノでも指折りの魚屋通りだったというところが目に留まりました。
わたしの泊まったホテルは高級デリカテッセンペックの隣、
スパダーリという名のプチホテル だったのです。
もしかしたら鮮魚店だったのかもしれません。
文中に書かれていた魚臭は微塵 もなく、むしろ、ちょっとおしゃれ感のあるお店が
建ち並んでいました。 知っていれば、感慨があったかもしれませんね。

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『コルシア書店の仲間たち』を最初に読んだのは、十数 年前です。
その時も感動したのですが、今回再読して、 違う場所に目頭が熱くなりました。
少し遅れてやってきた 熱い青春の日々、輝いていた書店での活動が、
時の流れと ともに失われていく切なさに、胸を揺さぶられました。


「人間のだれもが、究極においては生きなければならない孤 独と隣り合わせで、
人それぞれ自分自身の孤独を確立しない かぎり、人生は始まらないということを、
すくなくとも私は ながいこと理解できないでいた。
若い日に思い描いたコルシア・ディ・セルヴィ書店を徐々に 失うことによって、
私たちはすこしずつ、孤独が、かつて私たちを恐れさせた荒野ではないこと を
知ったように思う」と、あとがきに書いておられます。


Atsukow_2 理想の活動地であったコルシア書店の変化、そして最愛の夫の死、
日本では父と祖母が亡くな り、須賀さんにとって辛い時期であったことが覗えます。

夫ペッピーノさんが生きていたら、きっと須賀さんは今もイタリアに
暮らしていたのではないだろうか ふと、そんなことを思います。
わたしたちが歓喜して読む小説のようなエッセイは 存在せず
翻訳家として活躍されていたのではない でしょうか。
最愛のものたちを失うことによって、共に生きた時 間は凝縮され、
時に磨かれ美しさを放ちだします。 須賀さんは書くことによって、
もう一度愛した人たちと共に生き直したのだと感じました。

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何度読んでも発見がある須賀さんの作品群は、
没して18年経つ 今もファンを増やし続けています。
他の作品も、機会があれば取り上げてみたいと思っています。

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2017年4月13日 (木)

参考文献 須賀敦子全集 全8巻 河出書房新社

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文庫本でも全集が出ています。Amazonの全集販売では1位だとか。
たまに手にとってパラパラとめくります。  
読むかというと、別に買ってある単行本を再読しちゃいますね。
全集は眺めて楽しむもの、ではないのですが。
この読書会を機に読んでいない巻を開いてみます。
とりあえず、持っているだけで安心してしまうのが全集のような気がします。

2017年4月12日 (水)

参考文献 『須賀敦子のミラノ』 文/写真 大竹昭子

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須賀敦子さんにとってミラノは特別な街だと思います。
『コルシア書店の仲間たち』に登場 する特別な友人質のとの出会い、
翻訳と学問の充実、最愛の人ペッピーノとの結婚と別れ、
喜びと悲しみが同じ重さで存在した街でもあったことでしょう。

大竹昭子さんはミラノでの須賀さんの足取りを辿ります。
美しい写真は今のミラノですが、
石造りの街並みはさほど変わっていないのかもしれません。
表紙の写真はミラノ大聖堂にそびえる尖塔に立つ聖人たち。
屋上に上がると後ろ姿を見るこ とができます。
その背中に、ミラノを守ろうとする聖人たちの強い意志と孤独が、感じられ るようです。

夫ペッピーノを亡くし、自分がどうやって生きていくのかを
決めなければなりませんでした。
著者は須賀さんの日記から「淋しいような生き方を撰んできたのだ」と抜粋しています。
やがて、自分を役立てるために日本への帰国を決断します。
創作への熱い想いは20年後 『ミラノ霧の風景』で実を結びます。
著者と共に須賀さんの軌跡を追いかけて、
ミラノの 街を巡っているような気持ちになります。

2017年4月11日 (火)

参考文献 『須賀敦子が歩いた道』 松山厳他 新潮社

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黄色い帯に「とんぼの本」とありました。そうか、とんぼの本ねと思い
中身をパラパラと 見て買い求めました。
カラー写真満載で、コンパクトに知識が詰めてある分、割高感はあります。
幕の内弁当みたいな本のシリーズが、「とんぼの本」かなというのが個人的な感想。
雰囲気が分かりやすいのが魅力です。

幼少期からイタリアまで、須賀敦子さんが歩いた街を訪ねていく内容になっています。
小林の聖心女子学園の坂道に始まり、シエナ、ペルージャ、ローマ、ミラノ、
ヴェネチア の美しい写真が現れます。
そこに作品から抜粋された文章が添えられています。
本を読んでからイメージを定着させる副読本とし最良の書 だと思います。

2017年4月10日 (月)

特集『書かれなかった須賀敦子の本』 考える人 新潮社

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『考える人』買うようになったきっかけは、
須賀敦子さんについて書かれた連載が載っていた からです。
それから年4回の季刊誌を購読するようになりました。
このように特集も組んでくれました。
この中で一番興味を惹かれたのは妹さんのインタビュー記事でした。
『ヴェネチアの宿』のラスト、オリエント急行のカップを、危篤の父に持ち帰るシーン。
お父様は、違うといって横を向かれたとか。
そりゃあデザインだって変わりますでしょうと 妹さん。
美しい小説のようなエッセイを遺された須賀さん、
計算され尽くした小説の部分 も多々あったのだと再確認しました。

季節が変わるたびに発刊される『考える人』、毎号組まれる特集は楽しみでした。
この春で休刊になるそうです。とても残念です。

2017年4月 9日 (日)

追悼特集『須賀敦子』 西島孜哉 谷脇理史編 世界思想社

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『ヴェネチアの宿』を最初に読んで、
美しい小説のようなエッセイに魅了されました。
久々に感動を覚えたのです。
ところが、それも束の間、すでに死後2年が経過していました。
あぁ、なんで残念なことだろう。もう新しい作品は生まれてこないのです。
そんなおり、 追悼特集を組んだ雑誌があると知り、あわてて書店に走ったのです。
買い求めたのが本書。
須賀敦子のファンになると、どうしてか夢中になるんですね。
たぶん、何を読んでも 裏切られない、確かな言葉と出会えるからかもしれません。

2017年4月 8日 (土)

参考文献 『霧の向こうに住みたい』 須賀敦子著 河出文庫

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『霧の向こうに住みたい』この題名のエッセイは、心に残る一作です。
須賀敦子さん自身も自分が書いた中で好きであったと、どこかで読みました。
読書会用に絵葉書を作りました。
描いてもらったのは、このエッセイのイメージです。
霧の中にぽつんとある石造りの、寡黙な羊飼いたちがワインを飲んでいた小屋。
思い出すと、どこであったのか定かではなく、夢で見ただけのような場所、
自分が、死んだ時、こんなの風景の中に立っていると、誰か迎えに来てくれる、
と書かれています。
この章がとても心に残りました。

イタリアは階級社会で、羊飼いは最下層の民です。
貧しい民ですが、 羊飼いは古代からある職業の一つでもあります。
神話にも聖書にも出てきます。
貧しさは哀しく、寂しいけれど美しくもある聖書の一節のようです。
須賀さんはイタリア人になった人かもしれないと、このエッセイを読んで感じました。

2017年4月 7日 (金)

 『江戸吉原図聚』 三谷一馬著 中公文庫

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江戸時代の遊郭文化の詳細を知るの好適書です。
『好色一代男』の大半は遊郭通いが占めて います。
遊郭といっても江戸は吉原、京都は島原、大阪は新町、三大遊郭でも
それぞれ風習 が違います。でも、やはり代表格は吉原でしょう。
花魁は、太夫は、装束は、とにかく知らなければ想像すらできません。
基礎知識がたっぷり と詰まっています。
絵と解説で網羅しようという試みが本書。まずは吉原への道中。
舟で、馬で、籠、庶民の大 半は徒歩。その道順から書かれています。
大門口、にはソバ屋があってと、リアルの情景が 浮かんできます。
手助けする挿絵もたくさん載っていて、なるほどと興味の尽きぬ一冊。

『須賀敦子を読む』 湯川豊著 横山 重校訂 岩波文庫

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『コルシア書店の仲間たち』の編集担当であった湯川氏の須賀敦子論です。
個人的な関係 よりも、作品から読み解き、素顔をに迫ろうと試みたのが本書です。
作品の理解を深めるには最適の書かもしれません。
私自身は信仰についての内容に興味が湧きました。

2017年4月 6日 (木)

『好色一代男』井原西鶴著 島田雅彦訳 日本文学全集11 河出書房新社

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第9回の議題本は井原西鶴著『好色一代男』です。
現代訳は島田雅彦氏。文学界の伊達男という 感じで、
まぁ、ぴったりと思ってしまいました。
『好色一代男』は『源氏物語』のパロディです。
主人公世之介は光源氏の町人版。
『源氏物語』 よりも前の元祖モテ男、『伊勢物語』のむかし男、
在原業平の分身でもあります。

「好色」という言葉から浮かんでくるイメージは卑猥。
女性は、どちらかといえば敬遠したくなる題名です。
光源氏も在原業平も少女マンガに登場しています。
世之介だって同じく麗しい容貌なのですが 好色からくる先入観でしょうか、
少女マンガを彩る存在にはなっていません。
読書会に参加していただいた皆さんも、(女性陣)
名こそ知れども手が伸びない古典作品であったと言わ れた方が多かったようです。
わたしも同じく読書会がなければ読むことはなかったでしょう。

色事はもちろんオンパレード。しかし猥雑ではないのです。
パロディなのでばかばかしさもたくさん。
他愛のない恋愛の中に本気がああったり、恨まれたり懲らしめられたり
ちょっとした教訓談にも読めてきます。

女性サイドから言えば「男ってバカね」に尽きるのです。
でも、どこか憎めない世之介。だってバカなんだもん、ってなるんですね。
恋愛対象は女性ばかりではありません。男性だってOK。
お江戸は恋愛パラダイス。戒律の厳しい欧米諸国からみれば
驚くほど先進的な在り方であったようです。
もちろん恋のルールはちゃんとあり、そこに悲恋と刃傷沙汰がつきものなんですが。

物語は七歳から始まる女性遍歴で、ついに勘当され諸国放浪
遊郭巡り、痛い目に遭いながらも恋愛を繰り返す世之介。
後半は莫大な遺産を受け継ぎます。
そうなると、大手を振って遊郭通い。遊びの粋を極めようとします。

お江戸の遊郭文化は、色事だけでなく、文化芸術の発信地なのです。
遊女でも最高峰の花魁ともなれば、美貌、才媛、心意気が満点の
女王的存在となります。
女っぷりが素晴らしく、ぐいぐいと引き込まれていきます。

遊郭も江戸の吉原、京都の島原、大阪の新町がありました。
それぞれ遊女にも特徴があったのです。
江戸の吉原は武家、侍が多いので、女も度胸がなくてはなりません。
吉原の遊女は気風の良さが売り物、京都の島原はお公家さんが多いので
優雅で才媛です。大阪は天下の台所、美味しい物が集まってくるので
愛嬌なのでしょうか。

遊女と聞けば女性陣は眉をしかめるかもしれません。
すべてではないでしょうが、任期も決められ差別が酷かった
わけではないことが、分かってきます。

江戸文化を語るには欠かせない遊郭の存在。遊び方や花魁たちの
紹介を果たしているのも『好色一代男』なんです。

皆さん、なんとなく印象が変わったと思えた回でした。

実は、この作品から双六が誕生しました。
主人公世之介の人生をめぐる双六、『好色一代男双六』です。
記念的な作品でもあります。

参考文献 『阿蘭陀西鶴』 朝井まかて著 講談社

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第31回織田作之助賞受賞作です。
西鶴には三人の子どもがいました。そのひとり、娘のおあいは盲目でした。
幼い頃から知っていて、可愛がっていた妻が25歳という若さで亡くなります。
その年のう ちに出家して法体となり、子ども達も養子にだしてしまいます。
それは上記にある新潮古 典アルバムに書かれていました。
西鶴の作品は数有れど、私生活は謎が多いのです。
そこに想像力を膨らませ、盲目も娘おあいの視点から西鶴に迫った作品。
まかてさんは料理のシーンを描くのが巧いと感心します。
ご自分の手順を書いたのだとか。
時代の先端を走り続けた西鶴は、風変わり、阿蘭陀流、阿蘭陀西鶴と
呼ばれていました。 『好色一代男』などから受けるイメージ、
いえ本の題名からですね。ずいぶんと違った西鶴 が立ち現れてきます。
気難しいが奥深い優しさを抱え持つ西鶴の魅力を描き出しています。

2017年4月 4日 (火)

参考文献 『大阪暮らし むかし案内 絵解き井原西鶴』 本渡章著 創元社

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前口上に西鶴ほど有名で、西鶴ほど知られていない人物も珍しいと書かれています。
分からないことは西鶴に書いてある、という著者。
江戸時代や人間、ものを見る目が養わ れ今の時代にすら鏡になる、とあります。
そうなのですか。じゃあ、確かめてみましょう とパラパラページをめくります。
金の世の生き方に始まり、町人暮らしの四季、男の色恋、女の色恋、
章に別れ興味のある ところから読んでも楽しい。
わたしは特に女の色恋、好色五人女が意外と面白く、太夫の心意気が清々しい。
あれ、遊 女ものってかなりイメージが違うと思いました。
あ、ほんと知っているつもりになっていて、読んでいないだけでしたね。再確認です。
お金の話、江戸の暮らしも興味が尽きず、西鶴知りの西鶴知らずのわたしでした。
初心者も楽しめる西鶴入門書です。     

2017年4月 3日 (月)

参考文献 『好色一代男の研究』 信多純一著 岩波書店 

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『好色一代男』は源氏物語をはじめ、あらゆる古典のパロディ的要素があります。
古典初心者のわたしとしましては、そこまで読み解くことは難しいことです。
あらゆる 方面から解読しようとした、まさに研究本です。
大型書店で8200円で販売されていました。
古本サイトで見つけ、破格の値段であったの で、ついポチッとおしてしまいました。
初心者には、分不相応であったかもしれません。

2017年4月 2日 (日)

『西鶴を学ぶ人のために』 西島孜哉 谷脇理史編 世界思想社

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最初の座談、西鶴の魅力と問題点はさらりと読みやすく、
興味が湧きます。
時代環境や俳諧から浮世草子、作品世界などが章ごとに
分けられ、きっちりと西鶴を勉強し たい人の入門書に最適。

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