岡本かの子『鮨』
岡本太郎の母であり、スキャンダラスな実生活のイメージが先行しがちの作家;ですが、
読後感はさらりとしていて爽やかです。
議題本の『鮨』は鮨屋の少女が店に来る初老の常連客「先生」に抱く淡い恋の裏側に、
食べることの罪深さ、生命のやりとりが語られます。
「先生」が語る生い立ちは岡本かの子自身を思わせ、
宮沢賢治的な繊細すぎる感性の持ち主であったことが窺えます。
この読書会がなければ手に取らなかった作家だというのが、
皆さんの一致した感想でした。
好き嫌いが分かれる作家でもあり、興味が湧いた人が多かったものの、
好きではないという人もおられました。
文章表現の巧みさと的確さと描写力に、
何度読んでも飽きず発見がある古典の要素を
備えた作品だと感じました。
特に先生が語る生い立ちが魅力的でぐいぐい引き込まれます。
今で言う拒食症に陥った幼い頃、
なんとか食べさせようとする母とのやりとりが美しく
人の哀しさとはかなさ、
愛を描きながら、生きることの業が透けて見えてきて秀逸。
人気漫画家でもあった夫、岡本一平との関係に苦しみ
仏教に救いを見出しました。
男性であれば仏教かとして名を残したかもしれないとも言われています。
岡本かの子の人生にも興味が尽きません。
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